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2014 DUBAI LONDON REPORT

2014年9月、2度目のドバイに、そしてデザインフェアで盛り上がっているであろうロンドンに向かいました。現地に行ってみないと分からないことは多く、様々な先進例や取組を見て聞いて判断するための材料を仕入れるための1週間でした。
いずれの国もたずねたのは平日(ドバイにおいては金土が週末で日曜スタート)でしたが、全体的にはロンドンは思ったよりも活気があり、ドバイは5月にたずねた時にくらべてややおちついたかな、という印象でした(ドバイの気温はこの時期まだ40度近くあり展示会としてはオフシーズンといっても良い時期であった)。
現地の方には、知見をいただき、また訪問先をアレンジいただくなど多くのサポートを頂きましたことを深く感謝いたします。


GIFTS & PREMIUM DUBAI 2014
これから勝負したい人の商談フェア

ドバイの中心地 World Trade Centre Hole 6 で行われた見本市の初日を見学。赤い絨毯に王族のテープカットで賑々しくオープンしたものの会場内は比較的空いています。
日本のギフトショーをイメージしていると大きな違いがあり、こちらはあくまでも、B to B を目的にした商談会といった感じです。
世界的大手のブース、国ごと出展しているブースは、それなりの造作ですが、東南アジアの零細企業等はにわかづくりブースで見かけより商品で勝負といった印象をうけます。また完成品の大量販売よりは、名入れノベルティタイプ向け製品が多く見うけられました。
不思議なのは、なぜかアイロン台の出展が多かったこと。仮にもギフトショーですから、アイロン台はありえない、と思いましたが理由を確認する余裕はありませんでしたので、現地の方に近々たずねようと思います。
ところで、日本からの出展はあったのか? ありました。4社のコンソーシアムで2コマを使用していた JAPAN ブース。なかには創業88年、老舗の「大島つばき」さんが参加しており若社長のキリリとした和服姿が印象的でした。ただしブースデザインは派手さだけを狙ったお祭り的な印象で、中・高級品には少し似合わないかな、と少々残念。
1コマ約40万円、配付資料の広告掲載が5〜10万円の予算で出展できる展示会ですが、初日をみる限りはやや盛り上がりに欠けています。食品の出展や場内イベントが少なく静かな感じが物足りなさを演出してしまうよう。同じくドバイで行われる Food Show は出展希望のキャンセル待ちがでるほどの人気ですが。 
数回実施しているのに途上な印象は否めませんが、これから2020年のエキスポ開催、デザインシティの設置、隣国アビダビのアート推進など伸びしろはありそうです。中東で勝負したいならこんな見本市に出展してチャンスをつかむのもいいのではないでしょうか。日本企業の出展が少ない今なら目立てる、という利点もあります。
現在、日本の有名ラーメン店や、チェーン店の出展計画もあるそう(ハラル対応のラーメンはどんな味にはなるのだろうか)。
GIFTS & PREMIUM DUBAI 公式サイトはこちら
DUBAI WORLD TRADE CENTRE 展示会一覧


Al Qattara Arts Center
アブダビ・砂漠の中のアートセンター

ドバイからも日帰りが可能な Al Ain は、同じUAEではありますが、実質的には隣国 Abu Dahbi の古都。位置関係でいえば東京における鎌倉のような存在でしょうか。ドバイの方がオンシーズンに出かける緑豊かなオアシス。中規模の博物館、植物園などが多くありますが、観光都市とまではいえないような静かな街です。
Abu Dahbiは近年サディヤット島に、ルーヴルと15年契約を交わして建設している美術館の開館が待たれます(地元の方によればいつになるか分からないとのこと)。また街の広告では他にもグッゲンハイムなどいくつかの美術館が建設中であり文化事業に積極的に取り組んでいるようです。
そのサディヤット島とはずいぶん離れているこの Al Ain にも現代的なアートセンターがありました。運転手も場所が探せず、わかりにく場所にあるのですが到着してみれば、スタッフの方はいたって親切に館内を案内してくれます。
どのような活動をしているのかを知りたかったのですが、館内説明でもっとも興味をもったのは実は湧水の話し。館の建設中にオアシスの源でもある泉がみつかり、地下1階でその泉を見学できるように設営されています。砂漠であるUAEで贅沢に使われている水は、海水の淡水化だけではなく、場所によってはこのような湧水が利用されているようです。
肝心のアート活動は、この日は来館者がなく活動風景は見学できませんでしたが、おもに絵画、写真、木工、陶芸、CG、書道などかなり広範囲なアートクラフトを支援しており、各教室には十分な材料と機材が用意され充実しています。また教室もそれぞれ清潔でシステマチック、とても砂漠地とは思えない施設です。前もって予約すれば実際に体験ができますが、空いていればその場で「何かやってみますか?」と親切にたずねてくれます。
公式サイトはない、とのことですがAbu Dahbi観光サイトで概要の紹介があります。


Artsdepot
協同企業体が運営する複合的アートセンター

ロンド市の北部、West Finchley から徒歩15分の複合型施設。通常観光客など訪れるような施設ではなく、現地にお住まいの方からご紹介いただきたずねてみました。
日本人も多い住宅街にあるこの施設は、複数の文化的団体によって設立された会社が運営し今年ちょうど10周年である、とフロントのスタッフから確認。
館内には、専門学校の一部の教室(二重ドアで厳重に仕切られていた)や、カフェ、ダンスのレッスンスタジオ、劇場、工房などが含まれており、つい最近まではアートセンターも入居していたが、近くの教会に移転したそうです(残念、、、)。 
このカフェは近隣の子供達の作品発表会やイベントも開催されるなどフリースペースとしても機能しており大変に開放的。劇場も小中学生が利用することもあるようです。200人前後の小劇場と、やや大きな劇場があり、「座・高円寺」のような印象ですが、大きく違うのは運営スタイル。
日本ではこのような複合施設は「武蔵野プレイス」「仙台メデイアテーク」など図書館を中心とした指定管理制度でなりたっているケースがおおいのですが、ここは自主的な運営を推進するために運営企業が多くのドネーションを得ている、ことです。たとえば2014年の目標額は180万ポンド(1ポンド約170円)。これらの寄付を集めるために使途を記載したフライヤーも配布。 とはいえ180万ポンドですから、国民性・文化の違いを感じます。
また数多く開催しているワークショップも、「ロシアンバレエ」「油彩教室」など本格的なものがそこそこの価格(おそらくフェアな)で提供されていました。きっちり受益者から負担いただき、運営する、自信のほどをうかがえる自主性の高い施設でした。
Artsdepot公式サイト


EAST BARNET SCHOOL
英国セカンダリースクール見学及び校長へのインタビュー
 2014年9月17日に、英国のセカンダリースクール(中学、高校)のイーストバーネットスクール(注1)を訪問しました。素敵な門をくぐると校舎までの道には彫刻が並んでいて、開放的な感じの学校の印象を持ちました。(地域社会との連携活動〜アーティストや作家や俳優専門家とのイン・レジデンシー・プログラムの一環として、門も彫刻作品も創られたようです。)
 クリストー校長には、校舎の中を案内していただいた後、学校経営について熱く語っていただきました。I want to learn「学びたい!」という学校ビジョンのもと、 いかにインスピレーショナルな動機付けをしながら生徒達の学ぶ意欲を育んでいける学校文化を創って行けるか、ということを中心にお話いただき、強いリーダーシップと熱さと信念をもって学校経営に取り組んでいらっしゃる様子が伝わってきました。
 急速に情報化が進み、学校の役割が変化し、20年後には学校の存在そのものも問われる時が来るかもしれない現代社会において、時代や国が変わっても、(学校の役割として)変わらないものは、「皆がユニークな存在であり、一人一人が特別であるということ。」「互いに尊重し合える関係を、いかに育んでいけるか」とクリストー校長は言われていました。 
 また、この学校は、勉強だけではなく、心のケアにも力を入れているようでした。「ハッピーな学生は、最大限の可能性を発揮することができる」という信念のもと、スクールカウンセラーを中心に、カウンセリング、元気を回復するめい想、メンタリング、コーチング、マインドフルネス(注2)等こころのケアのサポート体制も整っているようです。実験的に導入したマインドフルネスプログラムは、青少年期のストレスや試験への不安を抱える生徒に対してポジティブな効果が現れ、その活動が教職員にも広がっているとのことでした(50人以上の職員が放課後のクラスに参加)。生徒はもちろんのこと、学校職員も含めた学校コミュニティ構成員すべての情緒的健康やウエルビーイングを大切にしている学校文化があるんだなあという印象も持ちました。
 地域社会における責任を育んでいくことを目的とした生徒中心の縦割りハウス活動においては、それぞれのハウスでサポートするチャリティー組織(日本でのNPOやNGO等の民間団体など)を決め、イベントや募金活動なども活発に行っているようでした。

(注1)イーストバーネットスクールは、教職員の人事、学校のカリキュラムや日程など独自に決められるアカデミーステータスの公立学校(テクノロジーの特色を打ち出している学校)で、自由度があり、校長のリーダーシップが発揮されやすい学校のようです。
(注2)マインドフルネスとは、自分の身体や気持の状態に気づく力を育む心のエクササイズ(「今この瞬間」の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れる事)で、すでにその効果について多くの実証的研究報告があり、ストレス対処法の一つとして医療、教育、ビジネスの現場で実践されているようです。

個人を尊重し、自立した人材育成を目標に教育に取り組むこの学校を見学し「留学するならこんな学校がいいのだろうな」と率直に感じました。 Mr.Christouのリーダーシップ、哲学を感じ、多感な中高時代を過ごしたら、どんな人間に成長するのだろうか。
現在この学校には一人だけ日本人の生徒がいるそうです。
EAST BARNET SCHOOL 公式サイト

アシスタントインタビュアー:IKUYO MIYAMURA


Bromley by Bow Health Centre
住民運営で成り立つ総合的コミュニティ

世界でも類をみない自主運営スタイルが注目を浴びたこの施設。設立から30年。現在はどんな成果、どんな課題があるのだろう、と訪ねてみました。
ロンドン市内の東部 Bromley by Bow 駅から徒歩3分。この周辺は低所得層居住地域という触れ込みですが、実際には道行く人も会社員風の方が多く寂れた風もなく、ごく普通に見えます。
そもそも施設設立の発端は、住民の無関心による1組の親子の悲劇から住民同士の交流をはかり、自主的に生活を守ろう、としたことによるもの。と、杉並区の生涯学習でも先進事例として紹介されていました。
こう書くと簡単なのですが、誰がどのようにして実現したのかがとても重要。教会関係者として派遣されたアンドリュー氏が住民りーダーたちに声をかけ、<対話>を繰り返していくことで、相互理解を深めコミュニティが徐々に成立していったそう(公式サイトに記載あり)。

Work together, Talk together
施設形成の過程において驚いたことで今でも目にすることができるのが教会の活用。当時この地域に多かったバングラデッシュ人にはモスリムが多く、センターの拠点である教会を開放し、いかなる宗教の人にも祈りの場を提供したことです。そして当時は人数が少なかったこともあり、講壇椅子も中心に向き合うように並べられています(写真下)。
小さな教会から始まったコミュニティも今は増築を繰り返し、カフェ、外部とのコネクトルーム、専用車両も備えた立派な施設に発展しSocial enterpriseを拡充していました。
特にカフェの活用は興味深いものがあります。クッキングエリア の参加者がカフェのメニューを考え試作。しかし仕上がりには品質格差がありそれらはランク付けされカフェで販売されています。住民コミュニティとはいえ、皆平等ではなく、良い物は高い値段で、悪いものは安い値段で販売される現実を味わうのです。購入者も身の丈にあった値段のものを購入できるわけです。化粧品も同じ仕組みで販売しているそうですが、基本的には何が売れるのかをきちんと想定しているのです(スタッフの言葉に Shopping Basket を考えてとありました)。

Try to tour
毎月1回有料(50ポンドと決して安くはない)で外部の方向けに見学ツアーを実施しており、この日は私のほかにも、イギリス国内のコミュニティプランナーの女性が参加していました。料金はみなドネーションだと考え快く払っているようです。
ツアーでは、Director of Strategy の Mr.Hopewell さんが施設の沿革と哲学を2時間かけて紹介してくれます。このような施設に Strategy 部門があること自体、一つの驚きでもあります。

たっぷりと解説をうけすべてを紹介することは困難ですが、全体的にうけた印象は、この施設は受け身でなく社会情勢をいち早くとらえ対策・対応する一歩進んだ施設として住民の信頼を得ている、ということです。政府の干渉にも屈せず、独自にFoodbank(非常食)などを事業化したり将来必要なことを考え行動する人たちの集団は、これからもこの地域の心のよりどころとして活躍するのではないでしょうか。
Bromley by Bow Health Centre公式サイト


LONDON DESIGN WEEK
ロンドンの中心部、美術館や展示会場がデザインで賑わう9月。効率よく世界のアートアイテムを目にすることができる格好のチャンス。

TENT LONDON
White chapel 駅から徒歩10分。古い醸造所を会場に開催するこのイベントは各国からの来場者で賑わう。個人や小さなデザイン事務所も出展(販売も可)しており、ちょっとした腕試しにうって出る若手には人気の展示会のよう(とはいえ出展料は50万円前後から)。
車、家具、調理器具、雑貨など様々なアイテムがデザインされて出品されるので、いち早く自分だけのデザインアイテムをゲットしたい人におすすめ。買おうかどうしようか迷ったのが木の葉を模した手製のステンレストングが40ポンド、和紙をつかった吹き流しのような小ぶりのランプが700ポンドと値段もまちまち。
TOKYO DESIGN WALKも大きなブースで和調のメリーゴーラウンドをシンボリックに配し多数の映像作品を出展。また、もっとも注目したのは、大阪の女子大生が11人チームで自費出展した<マンガか>のブース。ノリで出展しただけ、というがなかなかの人気。若いってすごい!と思わず感動。誰にでもチャンスはある、と。

100%DESIGN
プレミアムリーグの試合も開催される Earls Court 駅の目の前にたつ展示場で開催される大規模な見本市。 ちょうどこの日も試合があり、サッカーファンとアートファンで駅周辺はごったがえしていました。
この展示会はイベント的なエリアと展示エリアがあり、場内はとっても賑やかに演出されていますが、家具、建材などの大物素材がメインで小物の出展は少ないことから、一般客にはちょっと退屈な方もいらっしゃるかも。
そんななか、とにかくセンスの良さが目を引いたのは南アフリカや、中南米の現代風クラフト。現地に古くから伝わるアイテムに欧米のデザイナーがエッセンスをくわえ無国籍な高級インテリアアイテムに生まれかわり日本の住宅でも無理なく使えそうです。

ロンドンデザインウィークは、見本市会場だけでなくミュージアムやギャラリーも参加しワークショップなども楽しめます。展示会シーズンは4月、10月、陽気のよいロンドンを満喫しながら世界のクリエイターと交流し、世界の目利きの評価を得る、そんなことも今はたやすく実現できるわけです。 出展申込みは半年前がピーク。良い場所を確保したいならより早いアクションを。


無料施設と安定運営は寄付から
LONDONの美術館など公共施設は無料入場できる施設が多いと聞いてはいましたが、ほぼその通りでした。
しかしながら、それらの多くでは入り口付近に寄付を募る募金箱が置かれています。目標額や、一口いくらなどと書いてあり、透明で中身が見えるように作られています。
今回の取材先でも自立した施設の多くが寄付をつのっていましたが、良き理解者を獲得し、パトロンになってもらうことが運営の基盤を左右することが分かります。
日本だと評議会などを設置して評価ばかりを行いますが、こちらは手痛い運営資金に影響するためしっかり活動しなくてはいけないという危機感もありそうです。
日本では宗教的にも、精神的にもなかなか寄付による運営は難しいのかもしれませんが、少しずつ世の中に寄付運営、寄付金サイトなども増えてきましたので、そろそろ試して見るのも良いかもしれません。
写真:美術館のドネーションボックス